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達也とのこれまでの事が浮かんできた。
4年目になるんだ。長かったのか短かったのかは
わからない。
始まりは何だったのだろう。
杏子は達也に一目ぼれをした。
だからと言ってどうこうするつもりはない。
素敵なご主人だと思い、素敵な家族だと素直に思った。
それだけだった。
お互いの存在を知って数年してから、達也は杏子を誘った。
杏子の憧れのような思いを知っていて、断られるはずが
ないと言う自信があったのだろう。
杏子はもちろんうれしかったが、達也の本心がわからなかった。
何で一回りも上の女を誘ったのか。
杏子は聞いた。
「なぜ?家族を裏切ることになるんだよ?
半端な気持ちなら、止めておいた方がいいし
Hだけなら他の人にして。」
と。
達也からの返事は、
「真剣です。俺の彼女になってください」
だった。
杏子は不倫する人など最低だと思っていた。
出会い系だとかわりきりの関係だとか、家庭を壊す気は
ないけど楽しみたい、などと言う男を軽蔑する。
が、お互いに本気で好きになってしまうのは
遊びの不倫とは別物だとも思っていた。
好きだけど家庭は捨てられない、
でも、会いたい愛してる・・・
悲劇のヒーロー・ヒロインのように思い、
自由に会えない事がさらに大きな錯覚を呼ぶ。
やっている事は同じ、不倫だ。
達也が一生懸命に言葉を考えてくれるメールが
うれしかった。
達也の予想通り、杏子が断れるはずがなかった。
一回りも若い、自分には手が届かない芸能人への
あこがれに似ている気持ちで見ていた男に告白されたのだから。
恋だと思っていた。自分は恋愛をしているのだと。
当然達也もそうだと思っていた。
そうでなければ始まらなかった。
達也の携帯がブルブルっと震える。
「来た!」
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