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翌朝、杏子を発見したのは犬の散歩をしていた老人だった。
こんなところで女の人が寝てるのはおかしいと警察に通報した。
「ほんとに眠ってるだけみたいですね。
ちっとも苦しそうじゃないし。
というか、何か幸せそうにみえませんか」
若い刑事が言った。
「ん・・・自殺・・・だな」
助手席に置いてあった
「ご迷惑をおかけしてすみません」
と書かれたメモを手袋をした手に持ち年配の刑事が言った。
かおりと達也は喪服に着替えていた。
2日前、達也の浮気を知り、その事についての話は終わっていないが、
今日は近所の知り合いの葬儀に行く。
達也が小学校の役員の時に、いろいろ世話になった人なので
2人揃って行かなければならない。
浮気の事についての話合いはほとんど進んでいない。
おととい、おかしなメールが来た。
その後、達也と連絡が取れず、
不安でいるところにまた、メールが届いた。
「東山公園。スペアーキー」
そこにいるのだろうかと不安と心配の中、パジャマにコートを
羽織行ってみると達也の車が送られてきた写真と同じように
停まっていた。
中で達也が寝ていた。だらしないカッコで。
持ってきたキーでロックを開け、
かおりは達也を揺さぶり起こした。
「なに?」
と達也が言ったので
「聞きたいのはこっち」
と言った。
達也はしばらく自分に起こった事を考えた。
杏子といたはずだ。なぜかおりがいる?
「あの・・・」
達也が言うと
「帰ってから。運転出来るの?」
かおりは感情を抑えて聞いた。
助手席の足元に紙コップが二つ転がっているのが見えた。
「あぁ・・・大丈夫・・・」
「ちゃんと目が覚めてからにして」
と言い、自分の車に戻った。
家に戻ってからも達也は眠そうで、話をしていても
うつろな感じだった。
これでは話にならないと思い、かおりは諦めた。
明日にしよう。土曜日で、仕事が休みだし。
かおりは眠れはしなかったが、布団に入った。
達也は布団に横になるとすぐに寝息をたてた。
口を開いている。
「ばかみたい」
翌日、子供を母に頼んで、連れ出してもらった。
公園に行ってくるといって出かけて行った。
達也は9時過ぎに起きてきた。
まだ、顔も洗っていない達也に聞いた。
「どういうこと?何があったの?」
「何って? 昨日のこと? だから、トイレに・・・
トイレに行きたくなって公園に寄ったら鍵、落としちゃって、
少し探したんだけど見つからなくて、車に戻って
どうしようか考えてたら寝ちゃったんだ」
かおりは昨日、送られてきたメール画面を開き、
達也に見せた。
一瞬、達也はビクッとしたが、
「何、これ? 俺の車? 誰が撮ったの?」
「わからないけど、送られてきた。女の人といるって」
達也はかおりの携帯を手に取り、もう一度見て、
「女の人?だれ? だれも写ってないじゃん」
と言った。
確かにだれも写ってはいない。
しかし、メールは女の人といると言っている。
どうすればいいのかわからないと言った感じのかおりに
「イタズラメールだよ、きっと」
と言いながら、携帯を返した。
差し出したその手に、指輪がない事にかおりは気づいた。
「指輪は?」
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