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お酒の勢いもあったと思う。
由美は
「よっばらい」
と言って笑った。返事はしなかった。
翌日、信行からお礼とお詫びのメールをした。
「変なこと言ってすみません」
「変なこと?やっぱし冗談だよね〜
ちょっと残念。」
「冗談ではないですよ。由美さんが嫌だったかなぁと思って」
「嫌な訳、ないじゃないですかぁ
でも・・半端な気持ちだったらやめといた方がいいよ。
家族に嘘つくんだから。私、奥様とも近所付き合いしなくちゃ
ならないし」
「半端じゃないっす。」
そんなやりとりを2日して、その間、由美は引いてみたり、
信行が諦めかけると今度はちょっと積極的に押してみたりして
楽しんだ。
一週間後の土曜日にふたりで会うことになった。
最初のデートで二人は当たり前のように結ばれた。
ただ、由美はセフレになるつもりは なかった。
信行がたまにエッチ出来るだけの相手を求めているのなら、
そうなるつもりはない。
由美は聞いた。
「私はあなたの何?」
信行は
「愛してるよ」
「癒されるんだ」
「由美が必要なんだ」
と思いつく限りの言葉を並べた。
その時から由美は信行に恋をした。
そう、その時からなのだ。
信行が誘わなければ、由美は恋に振り回されることなど
なかった。
ふたりで要るときは何をしても楽しかった。
が、会えないときが苦しくなっていった。
たまに車ですれ違う時がある。信行の助手席には奥さまがいる。
いつも
「話しもしない」
と言っているのに笑顔で笑いあってる。
会えない日が続いている時にそんな風に出くわすと、
愛しさが怒りに変わるのがわかった。
ニュースやドラマなどに出てくる、追いすがったり嫌がらせを
する女の気持ちを初めて知った。
“バカな女” と笑っていたが、一歩間違えば自分自身
そうなるのだとわかり、怖くなった。
そんな不安も信行に会えば吹き飛んだ。
全て忘れられた。愛されている、そう思えた。一緒にいる間だけ。
離れれば、また、不安と悲しみと怒りに包まれる。
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