アサは手がきれいな男の人が好きだ。
そして爪を伸ばしている男が大嫌いだ。
鳥肌が立つほど気持ち悪いと思う。

塾の少し手前で車の時計を見た。
10時23分。
25分に終わるのでぴったしの時間だが、だからと言って入れる
わけでもない。

入り口で誘導灯が動いているのが見えた。
前の車は校舎前に入っていった。
”私はどっち?” アサはちょっとドキドキする。
道路の反対側に停めても子供が歩いてくるのだから、何でも無いこと
なのだが、やはり近くに停めたいと思う。
誘導しているのは確か・・・小林とか言う先生だ。
アサは校舎前に入るよう指示された。

後ろの車は道路の反対側に行くようにと誘導灯が動くのを
バックミラーで見た。  プチラッキー!

アサは一箇所だけ空いている場所を探し車を止めた。
隣はアサの前を走っていた車だった。
意識して見た訳ではないが、子供が出てくる入り口の方を
見るとどうしてもその車越しになってしまう。
運転席にいるのは近所のコンビニにいる人だとわかった。
遅くまで働いている時もあるし若く見えるが、同じ位の子がいるんだ、
と思った。

間もなく疲れた顔をした息子が出てきて、「眠い・・・」と言いながら
後部座席に乗った。




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