車が留めてある店の裏に行くと、朝見た車は違う車になっていた。

駐車場を出て冷蔵庫の中身を思い出しながら家に向かう。
途中、通るとかならずひっかかる信号がある。
今日もだった。

停車している間、なぜかきまってわき道にある美容室を見てしまう。
お店の手前が空き地になっているので、道路から良く見える。

自宅を新築するときに一部を美容室にしたのだろう。
夢をいっぱい込めて。
壁の色・椅子の場所・照明のデザイン・・・

自宅部分らしき2階のベランダには洗濯物が干してある。
近所の幼稚園の園服もあるから、まだ、小さい子がいるらしい。

その夢のお城にお客様がいるのをあまり見たことがない。
が、今日はいた。
洋風の外観にあまり似つかわしくないお年寄りだった。
近所のおばあちゃん。
髪型と言うほどの髪ではないので、簡単なカットと白髪を
染めるのかしら。

美容師さんはお客に何か声をかけ、ハサミを動かす手を止め、
すぐ脇のテーブルにある電話の受話器を取った。

アサは信号で停まっている間、美容室に見とれていた。
アサには見た人の事をあれこれ想像するクセある。
時には自分がその人になってしまったりする。

いけないいけない。信号が青に変わって前の車が動き出した。
すれ違った対向車が今朝、店の駐車場に停まっていた車のような
気がした。




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