「アイス、買ってかなくちゃ」

  一時間弱、公園の駐車場に停めた車の中で待ち、
  そろそろ帰ろうかと思い始めた所に、助手席の
  ドアがガタッと鳴った。
  アサの車の隣にシュウの車があり、シュウが降りて
  立っていた。
  気づかなかった。少しうとうとしていたのかも
  しれない。
  アサはロックを開けた。
  さすがに夜の公園にひとりは怖いから、待っている
  時はいつもロックをしている。

  アイス・・・と言いながら、背の高いシュウが頭を
  下げるようにして助手席に乗り込んだ。

  「おかえり」と言った後、アイスと聞いて
  「あっ、じゃ、帰る?」
  と聞いた。嫌味に聞こえないように言ったつもり
  だったが、どうだったろう。

  「いや、まだ、ちょっとかかるって言ってあるから
  大丈夫」
  「そう・・・お疲れさま、おかえり」

  アサは倒したシートから身体を起こしてシュウに
  キスをした。

  一時間待って、家族がアイスを待ってるから帰るよ
  と<言われても、今のアサは怒らないでいられる気がした。
  実際シュウは平気でそう言うことを言ったりしたりする。
  何度もそんな場面があり、アサは泣いたり怒ったり
  してきた。

  慣れた・・・と言うか、それを仕方の無い事と言い聞かせ
  なければ自分は壊れてしまう・・・とアサは思う。

  とにかく、アサとシュウの想いには大きな開きがあるのを
  受け止め、それでもこうやって会う時間を無くしたくないと
  言うアサの思いで続いているのだろう。

  シュウとの会話は楽しい。
  仕事の愚痴であろうと、子供の話であろうと、とにかく
  楽しい。アサが落ち込んでいても、シュウのとんちんかんな
  慰めで笑ってしまう。         MainStory

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