たまにはシュウのズボンの中に手を入れながら話す時も
  ある。 が、今日はしなかった。

  今日はなぜか日本の首相の話からアメリカの大統領の話、
  獅子座流星群から長寿の話し、年号の話しになった。
  何の脈絡もなく、思い付いた事を口にして、茶化し合い
  笑う。
  「おれ、総理大臣になろうかな」 
  「きゃははっ、じゃ、私は首相の愛人かぁ〜」
  アサはこんな時間を失いたくないと思う。
  シュウが仕事を終え、家に帰る途中の数十分。その時間に
  合わせてアサが出られる日。限られたわずかな時間。



  思うように会えない苦しさと虚しさから終わりにしよう
  かとアサの方から言った事が何度もある。
  最初のうちはシュウが
  「え〜〜、俺、頑張るから」(何をかはわからないけど)
  と言い、アサはシュウのそんの言葉をうれしく思った。
  そう言って欲しくて、アサはそんな話を切り出すのかも
  しれない。
  
  ついこないだ、また、そんな話をした時には、
  「アサがあんまり辛いなら、終わりにした方がいいのかな」
  と言った。
  アサも今回は本気でそう思い、覚悟はしていたのだけど、
  いざホントにシュウから言われると、駄目だった。
  「月に一回でも二回でも、シュウがエッチしたい時だけでも
  いいよ。それで続けていけるんなら、それでもいいから・・・」

  涙も鼻水も一緒になっていた。
  エッチだけの繋がりはアサの本心ではない事は、鈍いシュウに
  でもわかっている。

  そんな、アサにとっては人生の一大事の話をしている時でも
  シュウは時計を気にしていた。
  22時になろうとしていた。娘の塾のお迎えが気になるの
  だろう。アサの気持ちをわかってくれたのか、早く切り上げ
  たかったのか、間違いなく後者なのだが、
  「頑張るから。今日の話は無かった事にしよう」
  シュウは言った。


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