シュウが手にしている携帯が時々光る。
  家族からの
  「アイス、まだ〜?」
  のメールだなとアサは思った。シュウはチラッと携帯に
  目をやるが、いじらない。
  アサは気づかない振りをしている。

  「明日は?」
  とシュウが聞いたので
  「お休みでいいよ」
  と答えた。
  ホントは会いたいけど、夜、何時に仕事が終わるかわから
  ない  シュウに予定を合わせるのは毎日は無理だ。

  「じゃ、あさって。土曜日ね。少しゆっくり出来るよ。」
  「うん!わかった。ダッシュで来てね。」

  「わかった。俺、頭悪いけど走るのは早いから。」
  足が速いのはシュウの唯一の自慢かもしれない。
  「頭の回転遅いけど、足の回転、速いんだよね〜
   でも、車じゃ関係ないし」
  「車ん中で一生懸命、足、回転するから」
  「きゃはっ、それ、白鳥のボートみたいじゃん」
  「そっ、エコだから。けっこ疲れるんだぜ〜」
  
  「じゃね」
  と言ってシュウが口を尖らす。
  アサは
  「うん。」
  と言ってキスをし、シュウが
  「気を付けて」
  と言ってキスをし、手を握る。
  次に会うまで頑張るんだよ、と言う意味らしい。
  シュウが降りようとするとだんだんと手が離れていく。
  シュウが・・・離れていく・・・・

  離れた手でバイバイしながらドアを閉める直前に
  「アイス、買ってかなくちゃ」
  とまた、言った。

  バカか!こいつは!! 
  浮気相手に家族思いをアピールするな!

  シュウは自分の車に乗り込み、エンジンを掛け、タバコに
  火を付けもう一度、アサの方を見て手を振り車を出した。
  タバコの煙とともにふぅ〜とため息をついてシュウは
  独り言を言った。


  「コンビニ、行かなくちゃ」 


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