小林は腰にタオルを巻いてシャワーから戻り、ベッドの
デジタル時計を見た。
直子も釣られて目をやった。
1時20分。真っ昼間。
「今日も幼稚園にお迎え?」
「あぁ、ちょうど良い時間だ」
着替えて、車を留めてあるところに戻って幼稚園に行くと
ちょうど2時頃だろう。
小林は携帯をしまおうとして、着信に気づいたがそのまま
ポケットに入れた。
「ちゃんとパパなのね。出ましょうか」
朝の駐車場に戻り小林の車の横に停まる。
車は普通にあり、店員が出て来て咎められる事も
なかった。
辺りを見回し、助手席から降りかけた小林は
「また、連絡するよ」
と言った。
「連絡は・・・もぅいいわ。」
小林は不思議な顔で直子を見た。
「受験が近いから?」
小林は聞いた。
直子は子供の受験と自分の恋愛は関係ないと言った。
「私は、私の事だけを愛してくれる人がいい。
そりゃ、奥さまが居るのは承知の上よ。奥様は別もの。
私、焼きもち焼きだから、嫉妬であなたを刺す前に
終わりにするわ。あなたの為に犯罪者になりたく
ないもの。さよなら」
焼きもちも嫉妬も嘘だが、そう言った。
最近、小林の事で噂が流れている。
塾に通う子供の親と必要以上に親しくしていると。
直子はドキッとしたが、耳にした話によると、
噂になっている相手が自分ではない事がわかった。
ホッとしたと同時に終わりにしようと決めた。
今日はもう一度だけ自分の気持ちを確かめようと会って
みた。小林が優しい言葉のひとつもかけてくれたら、
いつもと違うHをしてくれたら、別れるのはもう少し
先でもいいと思っていた。
結局、会った意味はなかったようだ。
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