アサの下の子とリナは同級生だ。
アサは年のわりに若く見え、初めて会ったときには同じくら
いかと
思った。
アサがかなり年上だと知ったのは随分時間が経ってから
だった。自分から目立つことをする訳ではないが、学校
や子供会の役員など頼まれると受け、そつなくこなす。
リナの小学校の卒業式の時には、保護者代表の挨拶をし、
参加者を感動させた。
サオリも泣いた。
子供が同級生とは言え、男の子と女の子だし、特に親しい
訳ではない。
学校行事などで顔を合わせるとたまには立ち話をしたり
するときもあるが、何と言うか、アサには近寄りがたい
雰囲気がある。
他の人たちはみんな普通に接しているし、アサはいつも
周りの人たちと笑っているし、他人のことを悪く言っている
のも聞いたことがない。
だいたい人が集まるところで、アサはひとりでいる時がない。
必ずまわりに誰かいる。
それが決まったグループという訳ではなく、お母さん仲間
だったり男の人だったりお年寄りだったり若い子だったり。
不思議な人だなと思う。
何でこの人と知り合いなの?と思うような人と話している
時もある。たとえば、他所の学校の校長先生とか、どこかの
社長さんとか。
サオリも仲良くなりたいと思うが、なぜか恐い気がする。
サオリはアサと話すと緊張してしまうのだ。
なんでだろう。
アサと話すにはいろんな事を知っていないといけないような
気がする。面白くなければいけないような気がする。
サオリが挨拶しようかどうか考えていると、アサの方から
声をかけてきた。
「こんにちわ」
サオリは今、気づいたように言った。
「あっ、こんにちわ」
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